ジーン・ジャクソン、トニー・モナコと続いたインタビューも遂に大トリ、小沼さん登場です。
ツアーファイナルのブルーノート東京も終えて、いろんな方の感想をSNSで拝見したり、実際の言葉で伝えてくださったり、を見聞きしてると、ついつい熱いものが込み上げてきます。今回、ブルーノート東京でのヘッドライナーという一つのピークを迎えたともいえる彼らのツアー直前のお話。
もうこの時点で最高の結果は見えていたような気がします。
気になる内容はトニーさんとジーンさんとの関係性。伝統をつなぐこと。音楽について。
片意地はらず、自然に語る小沼さんはすごく素敵でした。今回もお茶でも飲みながら、最後までゆっくりとお付き合いください。
ー それではよろしくお願いします!ジーンさん、トニーさんとお話、聞いてますので、小沼さんがトリです(笑)
公演前日のお忙しいところすいません。
小沼ようすけ(以下、小) よろしくお願いします!
ー ジーンさん、トニーさんたちから小沼さんのことも伺ってます。とても仲が良いんですね。
みなさん、メンバーのことを聞くと、とてもにこやかに話してくれて、こっちまで楽しくなってしまいました。
小 彼らは最高ですから(笑)
ー では早速ですが、みなさんに聞いている質問です。
小沼さんと音楽の出会いを教えてください。
小 母親がエレクトーン教室を家でやっていて、父親も趣味でギターを弾いていたので、生まれたころから音楽に囲まれていましたね。
ー ジャズとの出会いはいつごろですか?
小 ジャズとの出会いは音楽学校でジャズ・ブルースの授業があって、何も訳わかんなくて、それまではロックのギターをやっていたからブルースは知っていたんだけど、ジャズになるとなんでこんなに変わるんだろう??て思ってました。夏休みで帰省した時、親父が車でジョージ・ベンソンのジャズブルースの曲をかけてて、その演奏がめちゃくちゃカッコ良くて、そこから一気にジャズギタリストを目指すようになりました。
ー ちょうど今、ジョージ・ベンソンがかかってます!
小 あ、本当に?
それこそオルガントリオの曲です。ジャック・マクダフとの。
オルガンジャズを聴いて、かっこいい!!って思って。だから僕にとってオルガントリオがジャズの入り口なんです。
ー そうなんですか!運命的ですね。
小 そうなんです。そこからすぐ父親からCDを奪って、演奏をコピーしまくってました。
ー 昨日ちょうどレコード買って、ジミー・スミスとジョージ・ベンソンの(笑)
ではトニー・モナコのことは知っていた?
小 2006、7年だったと思うんだけど、インドネシアのジャワジャズっていうジャズフェスでオルガンを演奏していた。
歌を歌っていたり、セッションしてて、その時に初めてちゃんとトニーのことを知ったって感じです。その後、パット・マルティーノのバンドで来てた。
ー トニーさんもジーンさんも会ってすぐにケミストリーがあったと言ってたのですが、小沼さんはどうでしたか?
小 3.11の時に色んなミュージシャンの来日公演がキャンセルになってた時、トニーがブルーノートのスタッフに「大丈夫か?」ってメールを打った。
すぐにコットンクラブスタッフから返信があったらしく、その流れでジョンピザレリがキャンセルになった枠で来日しないかと。
僕も以前トニーとモーションブルーでセッションをしたこともあったから声をかけてもらって、、、
2011年5月にコットンクラブで3days、ドラマーが入れ替わりでトミー・キャンベル(dr)、ジーン・ジャクソン(dr)でやって、その時ジーンとトニーが初めてセッションしたときの瞬間のことは、いまだに覚えています。
全てが絡み合って、ゆったりとした「大きなうねり」みたいなものになるのを感じました。
トニーが「ジーン・ジャクソン!!」って声をあげて喜んでいて…。
一緒に演奏した瞬間の、ヘビーな…、自然現象の様なものが起こる感覚は僕もドキドキしました。
ー 二人に対して、年齢的にも安心感みたいなものはありますか?
小 いや、僕からすれば自分の憧れてたルーツに近い存在じゃないですか?
いわゆるジャズジャイアンツたちと、ジャズの歴史とともに歩んできた人達だから。
自分がそこに加わることの重みがありました。
もちろん、自分がこんなに素晴らしいオルガンジャズを演奏できる!っていう喜びもあるんだけど、二人から吸収できるものはすべて吸収してやろうって思いの方が強かった。
だから最初の数年間は安心感というより、毎回ドキドキしてましたね。
例えばトニー・モナコ、ジーン・ジャクソンの隣に歴史的にも有名なギタリスト、例えば、パット ・マルティーノがいてもおかしくないんです。
そこに自分が入っていってどんなアンサンブルの変化が作れるのか、その役割の重大さを感じていました。
でも毎年続けることによって、どんどん安心感というか、自分がいることでハッピーなエネルギーが生まれるんだって分かってきて、それが自信になっていきましたけど。
4、5年経ってきてようやく分かってきた。
ー へー!!ジーンさんは「ヨウチャンはトリオに新しいエッセンスを吹き込んでくれる存在」って表現されてて、とても嬉しそうでした。
小 ジーンは本当に色んなことを学ばせてくれるんです。
今までの歴史でどんなことがおこってジャズが生まれてきたのか、絶対、表には出てきてないジャズジャイアンツたちのエピソードとか、僕たちが憧れているあの時代のジャズシーンの内部でどんなことが行われてたか話してくれるんです。
あと、楽屋入ってから耐えず練習してます。あれだけのミュージシャンなのに本番直前まで練習してる、そういう音楽に対する姿勢もすごい。
なので一緒にツアーを回るととても成長させてくれるんです。
ー 特別な意味合いのあるツアーなんですね。
小 本当に。
トニーも愛に溢れている人で、そこにいるだけで、その場所の温度感が上がるんですよね。
トニーの持つ、そういうハッピーなエネルギーを間近に受けてると自分が出す音が変わってくるんです。
ー ジーンさんは「音楽の本質は愛と誠実さだ」と言われてました。トニーさんは「自分は音楽そのものになろうとし続けてきた」と言われてました。
小 そうですね(笑)、彼らは存在すべてが音楽だと思います。
ー 小沼さんにとって、音楽とは?
小 音楽とは、何か…、すごくピュアで、肉体をすべて忘れるすごく不思議な場所。
音楽をする、というより、音楽の中に飛び込むって感覚はあります。
そこに行ける時っていうのは、ミュージシャンに対しての愛情とリスペクトと、あとは全て無になった時。全ての条件が揃ったときにすごい渦になるんです。
特にトニーとジーンと一緒に無になって演奏して、オーディエンスもワーっ!ってなっている時の感覚は、他では味わえない特別な世界観があります。
終わったあと、「あれは一体なんだったんだろう?」って思うくらいの夢の中にいるような無重力感…。
幸せなエネルギーと愛情に満ち溢れていて、お互いが「わー!スゲーっ!!」って認め合っている、あのパワーが一体化した時の、あの感じは未だにあのトリオでしか味わえないんです。
ー その場で聴いてみたいです!
小 演奏している時はもちろん、ご飯食べに行っても、一緒に楽屋にいるだけでも、演奏している時と同じハッピーなエネルギーを二人からもらえる。二人はそれくらい大きいんです。
ー 大きな愛の人ですね。
小 うん。だから二人がそれだけすごい音楽を奏でる理由がわかりますよね、一緒に行動することで。
常にストレートだしね。美味いうなぎ食べたりしてるとすごい喜んでいて(笑)
それを観ている周りの見ず知らずのおばさんがつられてニコニコしてしまうくらいなんです。
でもそれは、彼らの演奏を観て、お客さんが笑顔になるのと同じことですよね。
ーヴァイブレーションの共鳴ですね。
小 そう。普段の行動の全てから音楽が始まっている。そこからすでにセッションなんです。
それが僕にとっては最高の幸せで。
(もう少し、つづく)
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