(翻訳:Noriko Honda)
愛と誠実さが音楽の本質。
前回のインタビューで優しく語りかけてくれたジーンさん。
今回はトニー・モナコ、小沼ようすけとのトリオのこと、日本のオーディエンスのこと、日本で一番盛り上がるジャズクラブのことなど、ただの音楽好きの姉弟が興味の赴くままに聞いております。
まだまだ長くなる可能性あり。なのでコーヒーやお茶など飲みながら、ゆったりお付き合いくださいね。
最初の瞬間から…
ー では、今回のトニー・モナコ、小沼ようすけとのトリオについて聞かせてください。
ジーン・ジャクソン(以下、ジ) どうぞ。
ー 今回のトリオを結成したきっかけは?
ジ 3.11の震災の時、多くのアーティストが来日をキャンセルしたんだ。放射能や地震のせいだね。東京のコットンクラブとブルーノートがアーティストが足りなくて探しているときにトニー・モナコからお見舞いのメールがきた。すぐさまコットンクラブとブルーノートが来日のオファーをしたら、「自分は全然平気だから、喜んで行くよ」って。最初の公演は別のドラマーだったんだけど、2回目の公演から私が参加した。その時の最初の瞬間から「ケミストリー」があった。
あれから今だに一緒に演奏できてるのは幸せなことだよ。ようすけとは、確か…、その後に一緒に組んだんじゃなかったかな…。
ー 具体的にいうとケミストリーとはどんな事なんですか?
ジ 「チョウタノシイ!」って感じだね。とても楽しかった。演奏していてとても気持ちが良かった。
あとステージ上でもステージを降りても人柄が素晴らしい。
ー なるほど!トリオのキャラクターってどんなものですか?
ジ 「チョットギリギリ」って感じかな(笑)トニーが体現してるのは「伝統」。彼はアメリカ人で、アメリカの文化や伝統を表現してる。ジミー・スミスをはじめとする伝統的なオルガンジャズに忠実なスタイルなんだ。いまジャズはすごく変化しているので、彼のように伝統に忠実に繋がりながらその末裔としてプレイするのはとても難しいことなんだ。単にアメリカの歴史や伝統を護るだけのオルガンプレイヤーは他にもいるけど、トニーは滅びつつあるオルガンジャズのイディオムやスラングを護り、活かしていくプレイヤーなんだ。彼のように伝統に繋がりながら常に新しい息吹を吹き込んで、さらに高い次元に昇華させてるプレイヤーは他にはいない。
ようちゃん【*4】は湘南人で(笑)、サーファーで、とてもクリエイティブな人。伝統に対するリスペクトを持ちながらオルガントリオに新しいエレメントをもたらしてくれる。
僕らのトリオには伝統があり、新しさがあり、それに加えてなんといっても愛があるんだ。テクニックと人間性のコンビネーションが僕らのトリオの特徴だと思う。
ー 新しいエレメントとはどういったものですか?
ジ オルガントリオでのギターは確立されているんだ。ウェス・モンゴメリーやジョージ・ベンソンに代表されるような伝統的な形がある。ようちゃんはとても高いレベルで伝統的でありながら、エレクトロニックな要素や、今までのオルガントリオでは珍しい要素や新しいメンタリティーをもたらしてくれる。僕らはオルガントリオやジャズの伝統と繋がってはいるんだけどそれを誰かに証明する必要はないんだ。
ー 証明するとはどういうこと?
ジ つまり、わざわざオルガントリオらしさを表現する必要はないってことだね。オルガントリオには伝統がある。そして、僕らは選ぶことができるんだ。
期待される伝統的なオルガントリオらしいベタなことをするか、もしくは、伝統をリスペクトしつつ、価値観に囚われずにオルガントリオのセッティングの中で自由にクリエイトするか。
トリオとして制限無しに、とにかく素晴らしい音楽を生み出せるかどうかが重要だから、それらしく見せようとは思っていない。
ー とても面白いです!だからあなたたちのトリオは古臭くなくて何度聞いても新鮮さがあるんでしょうね。
ジ 「ドウモ、ホントニ、オカゲサマデ!」(笑)
ー 日本人の前で演奏する時、何か違いを感じることはありますか?
ジ 日本のリスナーはとてもよく聴いてくれる。あと、空気を読んでくれる。演奏する空間や間に気を遣ってくれて、とても礼儀正しくやさしい印象だね。
ー 空気を読みすぎて、反応が薄くなって物足りなさを感じることはないですか?
ジ うーん…、楽しんでもらえてるか判断がつかない事もある。
ただ関西、特に姫路はすごいよ。老舗ジャズクラブのライラ【*5】でのライブはミュージシャンタイプのオーディエンスが多いのか、反応が大きくてクレイジーで、酔っぱらいみたい(笑) 反応の出方は方言や料理みたいに土地土地で特色がある。
ー では岡山のお客さんにはノリノリでダンスするようにアナウンスしときますね(笑)
ジ 「ゼヒゼヒ、オネガイシマス」(笑)
ー オルガントリオでプレイする時と他の編成とは何か違いがありますか?
ジ オルガンプレイヤーが一人でベースラインとメロディーやコードを奏でるから感覚的にもテクニックも全然違うんだ。言葉で表現するのは難しんだけど、一人の人間がベースラインだけ弾く時とメロディーやコードと兼任する時とはリズムの合わせ方が変わってくるんだよ。 ちょっとした事なんだけどね。
ー 演奏を聴けるのがますます楽しみになってきました!
(つづく)
【*3】インタビュー中、ときおり日本語を使って空気を緩ませてくれるジーンさん。この時は通訳のノリコさんの見事な翻訳を讃えるように「タシカニ!」と言って場を和ませてくれた。
【*4】小沼ようすけさんをジーンさんはようちゃんと呼びます。
【*5】姫路の1972年創業、JAZZ SPOT Layla 。ここでのライブのオーディエンスのノリの良さを「チョットギリギリ」と笑いながら説明してくれた。これはとっても良い意味で使われてた。
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