光と静寂のつむぎかた akikoインタビュー

10月25日に蔭凉寺お迎えする日本を代表するジャズボーカリストakikoさんに、昨年メールでテキストインタビューをお願いしました。

akikoさんの紡がれる言葉はとても丁寧で示唆に富み、その音楽と同様に、柔らかく、透明で、なのにしっかりと芯がある。

優しく寄り添ってくれるものでした。

折に触れそのの言葉を思い出してしまうほどに。

今年もピアニスト林正樹さんとお招きできるのがとても嬉しいです。

一年前のインタビューですが、akikoさんの言葉をどうぞお楽しみください。

そしてお二人の温かなライブに、秋の深まる蔭凉寺へどうぞお越しくださいね。

(ライブ情報は最後に記載しています)


akikoさま

「spectrum—スペクトラム、分光、と名付けられたアルバムをフューチャーして行われる今回のakikoさんと林正樹さんのライブツアー。

光の屈折、網膜の仕組み、脳の情報処理。そんなもので私たちが現実だと信じて疑わない世界は、本当は何色でもなく、何色でもある。輪郭はあるようでなくて、留まってるようで絶えず変化してる。私たちの目に見えるものの、なんと曖昧で儚いものか。

見えないものを見るように、二人は静寂を奏ででいるように思います。

静寂も含んだ音だからこそ、音が消えた後も優しく寄り添ってくれるのかもしれません。

私は何の楽器も演奏できません。

譜面も読めません。

コードも分かりません。

それでもお二人の音楽を聴いたら上のように思いました。

音をどう聴くか、は全く自由であるとは分かっていても、作った人から見て、そんなの的外れ極まりないよ、と言われたら少しはずかしい気もしますが、どう思われますか?



akiko:素敵な言葉で表現してくださって嬉しいです。

ありがとうございます。

今回のアルバムは、私の中で感じている「見えない世界」のエッセンスが所々に入っています。


サウボナ: なんでアルバムのタイトルがSpectrum になったのでしょう?


akiko: Tealのポエトリーで、「light spectrum」という言葉が出て来ます。

(※アルバム『spectrum』に収録されている曲。林正樹さんの曲にakikoさんが詩をつけたポエトリーな一曲です。)

元はニュートンが光をプリズムで原色に分けたものをさす言葉ですが、「spectrum」という単語は色々な意味で使われています。

何かイメージを限定する言葉よりむしろ、内容や文脈で様々な意味を持つ曖昧さが逆にいいな、と思いつけました。


サウボナ:akiko さんにとって、沈黙、静寂、とはなんでしょう。音楽に必要なものでしょうか。


akiko:私が勉強をしているアーユルヴェーダの聖典には、世界で最も美しい神の音(ナーダ・ブラフマ)は「沈黙」である、と書かれています。

そして創世記には「はじめに言葉(音)ありき」とあるように、音が宇宙の始まりであり、

音と音の間に、神秘が隠されていると私は思います。

と書くと、なんだかとても現実離れしているようですが、、、

音が消え入る瞬間や、声にならない声を大切に、今回の作品を作りました。

ちなみに林正樹さんは、「間を奏でる」というとても素敵なバンド活動をしています。


サウボナ:最後の曲、月ぬ美しゃ、を除いて日本語では歌われてないけれど、外国語で歌うこと、母国語で歌うことの違いはどう感じられますか?伝わり方もちがうのかしら。


akiko: 私はデビューしてからずっと、日本語で歌うことを避けて来ました。

なぜなら、どう発音していいかわからなかったからです。

日本語が母国語であり、日本語を話しているのに、おかしいですよね。

でも昔の私は、日本語をどうやって表現したらいいのか本当にわからなかったんです。

震災の後くらいから、海外で演奏するときに「やっぱり日本語で伝えないと」と思い実践し始め、少しずつ慣れていきました。

特に昔の日本の歌の歌詞はとても美しくて、勉強になります。


サウボナ:歌詩と詩。

歌手と詩人の違いってなんでしょう。

akiko:「歌手と詩」の違いでしょうか?

歌手と詩人の違い、というよりも、

私は、歌手とアーティストの違い、というものを顕著に感じています。

「歌手」というものに私は、目の前にある歌、与えられた素材をいかに自分のものにするか、みたいな職人気質のようなものを感じていて

そういう意味では私はあまり「歌手」ではないなぁ、と思います(笑)。

なぜなら、私の中では歌いたい歌=好きな歌と、そうでない歌がはっきりと別れていて

自分が好きだと思えない歌は、どうしても歌えないからです。

だから、心を込めて歌える歌(歌詞)を作ろうと思うし、そういった曲をチョイスしています。

質問の本意はこれであっていますでしょうか?

もし、質問の内容が「歌詞と詩」の違いだとすれば

どちらにも言えることですが、韻を踏んでリズムを大切に作る場合と、散文詩のように思うがままに自由に書く場合があります。

当然、音数が限られている「歌詞」の場合の方が、韻を踏む場合はさらに、制限が多いです。

限られた枠の中でアイディアを出して、削ぎ落として、最もシンプルな形で表現する行為は、

デザイナーさんたちの感覚に近い気がしています。

特に、深澤直人さんが『デザインの輪郭』という本で書かれていることに近いものを感じます。

散文詩の場合は、ただただインスピレーションに任せて即興的に書きます。

今回作ったTealのポエトリーは、この「デザイン」と「即興」のちょうど中間くらいに位置しています。


サウボナ:私のもう一つの仕事は、ヨガを教えることなんです。

上の質問での沈黙って、omの後の静寂とか、呼吸の中のクンバカのイメージです。


akiko:そうなんですね!私もリトリートなどではヨガのクラスを持ったりしているんですよ。

omの後、その余韻を味わう、まさにそんな感じです。

何か、そういったコラボもできるといいですよね。

たくさん聴いて、たくさん感じて、たくさん考えてくださって、すごく嬉しいです。

どうもありがとうございます。

お会いできるのを楽しみにしています。


akiko 林正樹 ライブツアーspectrum

岡山蔭凉寺公演

10月25日 日曜日

14:00開場 15時00分開演

チケット

前売り4000円 当日4500円

場所 蔭凉寺

岡山市北区中央町10-28

お申込み、お問い合わせ

サウボナミュージック

sawubona.music@gmail.com




美しく、繊細で、 叙情的 ⽇常にそっと優しく、寄り添う⾳楽。

2001年、名⾨ジャズレーベル「ヴァーヴ」初の⽇本⼈⼥性シンガーとしてデビュー以来、振り幅の広い⾳楽性で⽇本のジャズシーンにおいて常に異⾊の存在であり続けるakikoと、クラシック、ジャズ、ワールド、アンビエントなど独特の諧謔と⾼度な実験性によりノルタルジックで無国籍な⾳楽世界を作り上げるピアニスト・作曲家、林正樹のスペシャルなコラボレーションが実現。ミニマルな編成で紡がれる、詩的で繊細な、美しい静寂の⾳楽。

繊細なピアノの⾳⾊と⼼に残る旋律、叙情的かつ哲学的な詩と穏やかな声で象られた⼆⼈の⾳世界を、岡山が誇る音の名刹、蔭凉寺でゆっくりとお楽しみ下さい。

#akiko

#林正樹

#蔭凉寺 

Sawubona Music

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